魅力No.499


魅力を生み出す人~美術家竹本真紀~

 7月30日~9月11日(平成22年)まで、
八戸の中心街各所にて“ヨコヲちゃんを探せ!”
というイベントが行われていました。
“ヨコヲちゃん”というイラストが中心街各所に隠されており、
それを探して歩くというアートイベント。
その“ヨコヲちゃん”の生みの親である
八戸市出身の美術家竹本さんにお話をお伺いしました。

 

美術家 竹本真紀

保育園時代から絵を描くのが上手かったので、私が絵を描いていると友達が
集まってきて、しかも褒めてくれる。褒められることが嬉しいから、また描く。
コミュニケーションを取るのが苦手だった当時の私にとって、
絵は大切なコミュニケーションツールでした。

そのように絵が大切な存在となっていた私にとって、
小中高と進んでいく中で、美術家になるということは夢ではなく、
当然のことのように思っていました。

弘前時代

弘前大学にて岩井康賴氏、村上善男氏の両名より
美術の事はもちろん、美術に一番大切な精神的な学びを
教えて頂きました。
卒業後、柏や横浜を拠点に美術家として活動をしていく中で、
それがすごく役に立ちました。地方にいると、知識や情報では
中央の人たちに劣ってしまい、そのことで馬鹿にされたこともありました。
けれども、精神的な部分は通用しました。

“美術だけを勉強しても、いい美術家にはなれない。”

それを学べたことが現在につながっています。

ヨコヲちゃん

昨年(平成21年)、『酔っ払いに愛を「ヨコヲちゃんを探せ!」』という
イベントが八戸市にて行われました。八戸中心街には、数多くの横丁があり、
そこにある飲み屋を巡りながら、ヨコヲちゃんを探してもらうという企画です。
そこで生まれた“ヨコヲちゃん”を今年は、中心街の各所に飾って頂きました。
ただ、同じように見えて昨年と今年では“ヨコヲちゃん”の表情が微妙に違うんです。

大切なことは知識よりも本質

“ヨコヲちゃん”で言えば、フォーマットは決まっているのですが、
同じ図柄でも、手で描くことで毎回違うものが生まれるんです。
私は、美術の勉強を重ねていくうちに、上手に描こうとは
思わなくなりました。通常は、美術の勉強を重ねていくと、
絵の技法や価値観にばかりとらわれてしまう人が多数います。
私は、知識よりも大切なことは本質であると考えています。
なるべく下手に描きたい。技法や価値観にとらわれずに、
子どもの頃のように無心で描きたい。無の心で描く。それを大切にしています。

日常がナンセンス

八戸の人って、バカドリルや吉田戦車作品のようなナンセンス漫画を
地で行っていますよね?他人から見れば、くだらないと思うことを
誰にもアピールすることなく、ひっそりとこっそりとやっている。
日常会話の中でも、ナンセンス漫画のようなユーモアがある。
それが、八戸のアート文化を支えている一面となっていると思います。

輝き~sdu編集後記~

竹本さんにとって、アートとは呼吸をするために必要なものなのだそうです。
その感覚があるからこそ、行政や企業などの主催者側とアーティストとの
ディレクションの役割を引き受け、アートが活躍する場を作り上げていく
作業をしているのだと感じました。ディレクションは、自分の作品を
作り上げる時間を減らし、また、人と人をつなぐという大変な役割です。

すごく魅力的な人。竹本さんに思う感想です。
美術に真摯に向かっているからこその輝きが彼女にはあり、
だからこそ、彼女の作品である”ヨコヲちゃん”が街に輝きをもたらしました。
その輝きによって生まれた様々な想いが、輝きの基となる。

輝きが輝きを生む。

竹本真紀プロフィール

1976年 青森県八戸市生まれ。
1999年 国立弘前大学教育学部小学校教員養成課程卒業。岩井康賴氏、村上善男氏に師事する。 2000年 美学校小沢剛トンチキスクール入校。 2001年 ターナーアクリルアワード2000展入展 タイムラグ・ラグタイム展(八戸市美術館)。 2003年 詩人・松井茂氏と「8」結成。 2004年 北総ラリーアート企画・展示。 2005年 「Reading Room」(Bank ART NYK) 「かくめい」展(exhibit Live?Moris・銀座) 前橋アートコンペライブ グランプリ受賞。 2006年 ZAIM403号室に「MA」としてアトリエをかまえる。 2007年 「竹本真紀と松澤宥展」(ZAIM・横浜) 「竹本真紀と石渡玲玲展」(ZAIM・横浜) 「竹本真紀となぎゆうや展」(ZAIM・横浜) 創造空間9001(旧東横線桜木庁舎)の運営に関わり、展覧会を企画し始める。 2008年 柏の街でトビヲちゃんを探そう!(千葉県柏市)。 2009年 YCCオープニングイベント「創造界隈のアーティストたちvol.1」(YCC・横浜) 酔っ払いに愛を「ヨコヲちゃんを探せ!」(八戸市) ZAIMでトビヲちゃんを探そう!(ZAIM・横浜) 吉野町市民プラザでトビヲちゃんを探そう(吉野町市民プラザ・横浜) STOP・こども虐待 よこはま2009アート・プロジェクトでインスタレーション(横浜市庁舎) 光のぷろむなあど(横浜・吉野町) 
他、個展・グループ展多数

コメント一覧

  1. ヨコヲちゃん、はよく見ると火山から湯気が出ている風景を前に二人の人間が船を漕いているかのようです。あの火山は富士山でしょうか、八甲田山でしょうか。そんな空想をかきたてられます。

    ★さとちゃんぺ

    2010.09.29


  2. ☆さとちゃん
    街への溶け込み具合が見事で、
    元々その場所にあったんじゃないかと思える素敵な”ヨコヲちゃん”でした

    sdu

    2010.09.29


  3. ☆あきちゃん
    たしかに!
    竹本さんのような美術の先生だったら、もっと真剣に学んでいたかもしれませんね
    ホント、素敵な方だったので、これからのご活躍に期待してしまいます

    sdu

    2010.09.29


  4. 八戸にこのような方がいらっしゃるのは存じませんでした!?
    モノ凄く、頑張ってるなあ!!!と、感動しました。
    下手に描けるのは、元がしっかりあるからで、どれだけ沢山、
    描いてきたのだろうと想うと、またしても、頭の下がります。
    やってる方には敵わないです!!!!

    ゆりさん

    2010.09.29


  5. ヨコヲちゃん初めて知りました!
    竹本さんの「技法や価値観ではなく、子供のように無心で」という言葉に胸を打たれました。
    「人に伝える・伝わる」というのは時に理屈や理論ではなく、その時の何にもとらわれない感情が他の人を揺さぶると私も思います。
    計算ではないですね。
    とても素敵な人を知ることができてとても嬉しいです。
    ありがとうございます。

    zoom

    2010.09.29


  6. ヨコヲちゃんかわいい♪
    吉田戦車もすきです。バカドリルの筆者さんも吉田戦車も八戸出身なんですか?
    なんだかアーティスティックな写真が、竹本真紀さんの魅力を引き出してますね~

    kayo

    2010.09.29


  7. 好きなものは好きなのだっていうsduさまと同じフィーリングを持った方のように感じました。内容も深くいつもsduさまの投稿には感心させられます。八戸にも素晴らしい方が大勢いらっしゃるんですね。

    ちなみに最後の写真が私は好きです♪

    コクトー

    2010.09.29


  8. 綺麗な街並みにマッチしたイベントですね。
    ヨコヲちゃんかわゆい。

    さとちゃん

    2010.09.29


  9. こんな方に美術の先生をやって欲しい!!
    “人”の魅力あふれる記事ですね☆
    これからの活躍に注目ですね。

    あきちゃん

    2010.09.29


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