魅力No.810


「山のめぐみ」をみなさまに、やまぶどう生産加工農家 ~對馬美穂子さん~

 やまぶどう3

2010年10月28日、弘前市岩木町でやまぶどう農家を営む對馬美穂子さんを取材させていただいたきましたので、そちらをレポートをいたします。
對馬さんは、ぶどうが元々好きだったため、りんご農家からやまぶどう農家に転作したのですが、やまぶどう栽培するには知識・経験が少なかったのだそうです。
そこで、同じく弘前市にお住みの自生果樹植物に詳しい中田宝篤(ともあつ)さんにアドバイスを求め、やまぶどう園地を岩木山の麓に作付してらっしゃいます。現在は對馬さんと中田さんの二人三脚で園地を管理しています。

やまぶどう4

やまぶどうの生産

やまぶどうは、山林の中に自生しているものでした。
しかし、現在は国有林並びに日本の山間は主に杉が植林されています。
中田さんのお話では、広葉樹林で自生しやすいやまぶどうは杉林の山林では見られないそうです。

本来は自然のままに生育しているものですから、現在の一般に市場で販売されている生食用ぶどうと違い、作物として生育させるノウハウはあまり知られていません。

そこで、長年山歩きと土の研究を生業とし自生植物の知識も豊富な中田さんが、やまぶどうが自生している山の環境に近くなるように、對馬さんにアドバイスをしてらっしゃるそうです。

この園地にあるやまぶどうの種類は30種類。ほとんどが元々青森県に自生していた品種だそうです。その年の気候によって上手く生育するものとしないものがあるので、その品種の特性を知る上でもたくさんの種類を作付けしています。
やまぶどうの品種研究所のような状態でした。
さんかくつづら

写真は、この園地で栽培されている品種の中でも、もっとも古くから日本に自生しているやまぶどう「三角つづら」です。

園地づくりの工夫

この園地をぶどう畑に適した土壌に変えるためお二人は工夫をしてらっしゃいます。
コメヌカの他、広葉樹の落ち葉を大量に採取してきて、樹木の根本に腐葉土として使用しています。
リン酸・カリウムなど豊富に含んだ腐葉土を使用することで、できるだけ山間の土壌に近い形に園地を作り上げてらっしゃるそうです。
やまぶどうだけではなくベリー系の植物に共通することですが、生育する園地の土壌がアルカリ性でなくては、よい果樹は育たないと言われています。そのため、中田さんは冬の前の土づくりの為の腐葉土の準備に勤しんでいらっしゃいました。
このやまぶどうの作付けを初めて10年近くなるそうですが、最初の2年間までは園地に発生したネズミ・モグラ等の被害にあい、なかなか樹木の根が定着しなかったのだそうです。

駆除用品

そこで中田さんがお考えになって、開発したのが上の写真です。

駆除用品2

ぶどうの樹木を支える支柱に、100円ショップで買ってきた鍋を工作して付けています。風を受けると地中まで振動が伝わるようにしたところ、ネズミ・モグラ等の被害が低減して現在の立派なやまぶどう園地に成長できたそうです。

やまぶどうの収穫

やまぶどうは、自生の状態では綺麗に果樹を付けるものではないのですが、きちんと人が手を入れ、剪定・摘果等を行うことにより、他の一般生食用ぶどう種とも変わらない品質の良い果樹状態となります。取材時はちょうど収穫の最中でした。
収穫の目安は糖度計で測って糖度25度程の状態だそうです。甘さの中に、しっかりとした酸味があるのがやまぶどうの特徴です。

やまぶどう1

おいしい果汁を得るため、秋に一度は必ず霜にあてます。糖度が十分上げて果樹の完熟を待ち収穫します。

糖度計で糖度を測りつつ、完熟したものから収穫です。

この時、小さな芽をハサミで切り取ります。

気をつけて収穫

これがジュースに入り込むとエグミの原因となり、甘さの中の酸味を楽しむ前にエグミが先に来て後味を損なうそうです。
収穫のこの時点で、この作業をしっかりすることも、やまぶどうジュースの美味しさを作り上げる大事な手順です。

甘くて酸っぱい、やまぶどうジュース

霜しずく

對馬さんは、現在やまぶどうの生産だけではなく、加工まで一貫して行っております。やまぶどうのジュース、晩秋のやまぶどうの香りが漂う「霜しずく」です。

300ml 1,500円(税込)
600ml 3,000円(税込)

霜しずくグラス

やまぶどうの一般的な効用としては滋養・強壮。食物の消化吸収を助ける・精神疲労の回復。豊富なポリフェノールは、眼精疲労にも効くとの中田さんのお話がありました。
やまぶどうが濃縮されたジュース美味しいだけではなく、健康の為に良いそうです。
青森県自生のやまぶどうの生育をしていらっしゃったお二人の努力・ご苦労の結晶であるのが、この貴重なやまぶどうジュースです。


先人の知恵を伝えて

サルナシ

この園地には、他にも自生の植物サルナシ(マタタビ科)というキウイフルーツの様なさっぱりとした甘さの果樹も育てていらっしゃいます。

しかし、サルナシを栽培しようとする方は非常に少ないそうです。なぜなら昔から山林に自生しているものとはいえ保存しにくく、これまでは市場価値が少なかったからとの中田さんのお話がありました。

サルナシ1

写真はサルナシの樹です。
この園地ではサルナシとやまぶどうと混植しております。この二つの植物は、お互いの生育を邪魔することはないそうで、同時に有害病害虫が付くのを低減する効果を発揮しているそうです。

青森県は縄文時代から、多種多様な山のめぐみに恵まれておりました。
秋には、栗・トチの実・クルミなどから人が生きていくのに大事な栄養素である炭水化物を摂取し、サルナシ・やまぶどうはビタミンの摂取に重要な役割を担っていたのだという中田さんのお話がありました。
またサルナシのツルなどは冬に雪上を歩く「カンジキ」などによく使われていたそうです。
「カンジキ」とは、雪上や氷上での走破性を高めるために靴・わらじなどの下から着用する物です。サルナシのツルは、一度乾燥させると切れにくく雪上で使用する「カンジキ」には欠かせないものだったそうです。
私たち若い世代には、あまり馴染みのない植物かもしれませんが、そのように昔の人々は身の回りにある物を有効活用していたのだそうです。

サルナシジャム

サルナシジャムも生産しております。サルナシはジャム加工で加熱する際、熱変色しやすいため、サルナシの自然な緑の色を失わせないよう細心の注意を払って加工していらっしゃるそうです。フルーティーな甘みのある美味しいジャムです。

写真は150グラムで500円(税込)で、販売していた商品です。
現在は、お値段は未定ですが少し増量した商品を開発中だそうです。

岩木山と園地

やまぶどうとサルナシともに、お二人の気持ちの入った岩木山麓のめぐみの商品です。是非ご賞味ください。

販売元及び問い合わせ先:
中田宝篤(ともあつ)さん
青森県弘前市桔梗野2丁目2番地1号「にしきいし」
電話番号:0172-35-2414

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