1月15・16日の2日間、弘前市立観光館・研修室で行われた「フィルムツーリズムセミナー」と題したセミナーに参加しました。
このセミナーに参加したきっかけは今月初め、あるラジオ番組で弘前フィルムコミッションの方が、映画「津軽百年食堂」の告知をしていた際に「監督さんたちを迎えたセミナーが開催されます」というのを聞いたからです。
「あの映画のスタッフに会えるんだ!」という思いで問い合わせの電話をしました。「当日、直接会場へお越しください」という言葉をいただき、参加することとなりました。
記事を2つに分けて、参加し体験した事を、作品のネタバレをしない程度にお伝えします。映画の公開を前に、少しでも「津軽百年食堂」の内側へ入り込んでいただければ、と思います。
セミナー1日目(1月15日・土曜日)
セミナーの参加者は、約25名(うち一般市民は半分くらい)でした。
午後3時にスタート。今回の講師をご紹介。
映画監督の、大森一樹(おおもり・かずき)さん、
撮影監督の、松本(まつもと)ヨシユキさん、
プロデューサーの、木村尚記(きむら・ひさき)さん、の3人です。
以下、苗字のみで敬称略となります。ご了承ください。
まずは、出来立てホヤホヤの「津軽百年食堂・予告編」を見させていただきました。
個人的な感想として「早く本編が見たい!」と感じさせる予告編でした。
1日目のテーマは「映画ができるまで」「映画製作に地域が出来ること」。
今回の映画製作に携わった3人に、そのウラ話や、撮影当時のエピソードを語っていただきました。各人のお話を紹介します。
大森「実は、映画監督っていうのは、あらかじめ製作サイドで集められたもの(脚本・役者・お金)を『どうにかしてください』とお願いされて、それを引き受けるのが仕事なんですよ。このオファーが来る前まで、原作の事も役者の事もも全然知らなかった。じゃ、なんで監督を引き受けたのかといえば、今から20年前の夏に『満月』という映画を撮った時、すごく弘前の街の印象が良かったんですね。だから『ロケを弘前でやります』と聞いたときに、その時の印象があって、だから快く引き受けさせてもらいました。映画監督としては『あの街の撮り方は良かった!』と言う感想が欲しいなぁ」
松本「今回初めて、大森監督と組みました。『映画監督のイメージしたものをカメラで撮影し、形にする』それが撮影監督の仕事です。今回、新しいカメラで撮影に挑戦しました(これについては後述)。その部分を含めて、ぜひとも映画館で見てもらいたい作品です!」
木村「私はお金を管理するのが仕事です。実は『桜まつり期間に弘前に撮影に行く』というのは一番お金がかかるんです。しかし、あえてこの部分にお金を集中させました。それでも低予算でこの映画を作ることが出来ました。」
大森「明治時代のシーンは、オープンセットではなく黒石でロケをしたんです。セットなら何億もかかるものを(実景で撮ることにより)低予算で抑えました。映画を作る身としては『いかにお金をかけずに映画を作るか』を常に考えているんです。」
松本「桜のカットは、是非見ていただきたい自信作です!」
大森「実は東京の部分もこっち(弘前)で撮ってるんですよ。でも『言われなきゃ絶対にわからない』って形に仕上げました。(エキストラに参加した市民の話にふれて)これも、映画に協力的な一般の方々がいらっしゃって、その事が『映画のクオリティを上げつつ製作費を下げられた』良い例だと思います。」
などなど、いろいろと興味深いお話を聞くことが出来ました。
大森監督も絶賛していたように、今回の映画には市民の積極的な参加が不可欠でした。なので、それをしっかりとまとめる組織(弘前だと「フィルムコミッション」)の力は大きいんだな、という事がわかりました。
1時間ものトークが続いたところで、10分間の休憩。その間に撮影の松本監督が、今回の映画撮影に使ったカメラをセッティングしていました。
「えっ?」と思いましたか? 決して写真を間違えたのではありません。
Canonの一眼レフカメラ「EOS 7D」です。このカメラのムービー機能を使って「津軽百年食堂」は製作されました。
休憩後、後半へ。まずはこのカメラの説明から。なんと本体価格で10万円という、映画界の常識を覆す安値!
松本「今までの35mm映写機だと、レンタルだけで300万円。なので、この部分でかなり製作費は抑えられました。フィルムにはかなわないけど、かなりフィルムに近い質感で作品を撮る事が出来ました。」
大森「『三忠食堂』の奥の厨房を撮影場所に選ばせてもらったんだけど、他の店の厨房に比べて広くて、非常に撮影がしやすかった。とてもキレイで立派な厨房で、ライティングも良かった。」
三忠食堂さん、ベタ褒めされておりました!
その他、撮影や映画に関するさまざまな話が続いていきます。
話が一段落したところで、セミナー参加者の我々から、講師への質問タイムとなります。
Q「撮影期間はどのくらいでしたか?」
A「およそ1か月です」(木村)
Q「普通の映写機と今回のカメラとで、大きく違う部分があるのですか?」
A「今回のカメラのほうが、より映画らしい作品が作れる」(大森)
「一眼レフのカメラと同じ感覚で、映像が撮れるんです」(松本)
などなど、さまざまな質問にわかりやすく答えていました。
残念ながら、私は質問することが出来ませんでした。
時間となり、1日目のセミナーは終了。2日目は「写真撮影のコツを学ぶ」という、実践になります。その模様は次回。
あ、そうそう。「製作費」「低予算」という言葉が繰り返されてましたが…
実は、この映画の製作費は、1億円かかっていないそうです。
【筆者より】
映画は「制作」と書くのが一般的ですが、弘前フィルムコミッションの資料表記に従い「製作」で統一させていただきます。
コメント一覧