魅力No.2235


あなたの肖像-工藤哲巳回顧展

ある日本人の前衛芸術家が国内外で注目を集めています。

その名は工藤哲巳(1935-1990)。

工藤哲巳

コンピュータペインティング 1971年 倉敷市立美術館 (c) ADAGP, Paris ? JASPAR, Tokyo, 2013


1950年代末から「反芸術」運動の代表的な作家の一人として
主にパリを拠点に活躍していました。

強烈な存在感を放つ作品およそ200点と共に
工藤哲巳の生涯を辿る大回顧展が20年ぶりに国内で開催が決定。

大阪の国立国際美術館、東京国立近代美術館との共同企画によるもので
2014年4月12日より青森県立美術館にて開かれています。


『あたなの肖像―工藤哲巳回顧展』

今回特別に撮影許可をいただき取材してきました。
ごく一部ですが、ご紹介したいと思います。
見どころのひとつ、約半世紀ぶりの帰国の出品作
《インポ哲学-インポ分布図とその飽和部分に於ける保護ドームの発生》

場所や空間全体を作品として体験させる芸術・インスタレーションの概念がない時代に発表された伝説的な作品です。

『インポ哲学―インポ分布図とその飽和部分に於ける保護ドームの発生』展示風景 1961-62年 ウォーカー・アート・センター(ミネアポリス)蔵 ©ADAGP, Paris ? JASPAR, Tokyo, 2013

『インポ哲学―インポ分布図とその飽和部分に於ける保護ドームの発生』展示風景 1961-62年 ウォーカー・アート・センター(ミネアポリス)蔵 ©ADAGP, Paris ? JASPAR, Tokyo, 2013

作品はほぼ年代順に展示されていて
30年余りにわたる創作活動の変化を楽しむことができます。

『インポ哲学』1960-1961年 青森県立美術館蔵 (c)ADAGP, Paris ? JASPAR, Tokyo, 2013『インポ哲学』1960-1961年 青森県立美術館蔵 (c)ADAGP, Paris ? JASPAR, Tokyo, 2013

公害汚染や原爆など、現代の社会問題や歪みを予見していたかのような鋭いテーマの
作品が続き、重苦しいさと居心地の悪さを感じますが、
思わず魅入ってしまう不思議な感覚。

工藤哲巳(c)ADAGP, Paris ? JASPAR, Tokyo, 2013

全体を通して挑発的で一見グロテスク、混沌とした作風ですが
意外とポップでカラフルな色使いが印象的でした。
『記憶の独立』1980年 目黒区美術館蔵 (c)ADAGP, Paris ? JASPAR, Tokyo, 2013『記憶の独立』1980年 目黒区美術館蔵 (c)ADAGP, Paris ? JASPAR, Tokyo, 2013

大阪生まれの工藤哲巳は、五所川原出身の父を持ち 少年期を津軽で育ちました。

初期や晩年の作品に津軽塗りや縄文など、津軽からの影響を見ることができます。

『平面循環体に於ける増殖性連鎖反応』1958年 原美術館蔵 ©ADAGP, Paris ? JASPAR, Tokyo, 2013.JPG

奇怪さばかりが目立ちがちの工藤哲巳の作品
よく見てみるとまるで工芸品のような細やかで美しいものも多く
手仕事文化を発展させた津軽人の気質を垣間見ることができます。

『縄文の構造=天皇制の構造=現代日本の構造(天皇制の構造について―聖なるブラックホール)』1983年国立国際美術館蔵 ©ADAGP, Paris ? JASPAR, Tokyo, 2013


「あなたの肖像」は工藤哲巳が最も好んで使用した題名のひとつで
この”あなた”とは、作品を見る”あなた”のことであり
既成の価値観や約束事に縛られた”わたしたち”であり
自作の最初の観客である”工藤哲巳自身”でもあります。

なぜか不思議と、鑑賞直後より時間が経過する毎にジワジワと余韻に浸ることができる・・・。きっと、これが作者の思惑であり、作品の魅力でもあるのでしょう。
難解と一言で片付けてしまうにはもったいない。
目で作品に触れ、作品から放たれる”あなた”に
わたしは、あなたはどう感じるのか。この素直な感情を楽しんでみませんか?

ちなみに、青森県立美術館ではこの工藤哲巳展にいらしたお客様で、
美術館のFacebookページに「いいね!」をした方に
もれなく「県美オリジナル色鉛筆」をプレゼント中!これ可愛いです!
地下2階チケットカウンターでスマートフォン、タブレットなどで「いいね!」を見せてゲットしちゃいましょう☆

青森県立美術館Facebookページ

『あなたの肖像-工藤哲巳回顧展』

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会期:2014年4月12日(土)-6月8日(日)
休館日:4月14日(月)、4月28日(月)、5月12日(月)、5月26日(月)
開館時間:9:30-17:00(入館は16:30まで)
※ただし6月1日(日)-8日(日)は9:00-18:00(入館は17:30まで)

観覧料:一般1,200 (1,000)円 / 高大生900 (700)円 / 小中生300 (200)円
※( )内は20名以上の団体料金
※心身に障がいがある方と付添者1名は無料
※常設展観覧料は含まれません

常設展とのセット券もございます
一般1,500(1,300)円、高大生1,080(880)円、小中生360(260)円
※( )内は20名以上の団体料金
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コメント一覧

  1. It’s wonderful

    satomi

    2021.03.09


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