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「正しさより楽しさ」~世界の手本になる日本の手本、青森~

ドラゴンキューブ株式会社 代表取締役

平井 茂

青森県を中心に、県内外も含め6店舗を構える「萬屋(旧ゲーム倉庫)」、家電やファッションを中心としたリサイクルショップ「リユース倉庫」、オシャレなスイーツで女性に人気の高い「ドラゴンカフェ」を経営する。萬屋では、ゲーム、漫画、音楽、ファッションなど、様々なジャンルの商品を取り扱い、子供から大人まで楽しめる空間を提供している。


株式会社Jサポート 代表取締役

淨法寺 朝生

地域の課題を考え、教育とIT、人の力で改善を目指す。人材育成、農業支援、企業支援に注力する。地域の魅力情報発信サイト「青森の魅力」や、三沢の地域情報サイト「ミサワタイムズ」などを運営している。



青森県内各地や県外にも店舗を構える「萬屋」経営社長『平井茂』社長と、青森の魅力運営Jサポート代表の『浄法寺朝生』の対談です。地域の人々に楽しさを提供し続ける平井社長が考える仕事とは?そして幸せとは?青森から世界まで、幅広い話題に迫ります。

「仕事はゲーム」萬屋経営社長が語る仕事感

淨法寺:それでは最初の質問ですけど、平井社長にとって仕事って何ですか?


平井:仕事は一番楽しい趣味じゃない?ゲームだよ。僕は仕事はゲームだと思う。
色んな障害とかいっぱい出てくるじゃないですか、うじゃうじゃと。そのうじゃうじゃした敵とか落とし穴とかあるじゃない?大変な状況を作ってくれるでしょ?


淨法寺:経営で言うと新しい課題とか、想定外の事とかですかね?


平井:そうそう。それで第1ステージクリアして、やったぜーと思うと第2ステージはさらに難しくなる。「えーおかしいな」って。「これうまくいってたのにどうしてだよー」って。で第2ステージに上がってやっとクリアして、うまいこといくと今度第3ステージなんですよ。
後2年したらもっと良くなるかなっていつも思うじゃない?でも2年して楽になったことは1回も無くて、2年前がどんだけ楽だったかってことを思い知らされるだけ。
そんな意味で、仕事ってゲームだと思うわけよ。



遊び心を加えてみようと、今回はお二人に丸太に跨って語っていただいた。


貧乏でも勝てます!リスクがあるから面白い

淨法寺:質問ですけど、ゲームって面白いですよね?ボス倒してクリアしてまた新しいアイテム集めて。でも実際に目の前にボスがいたら恐くて逃げるじゃないですか?ドラゴンとか魔法を使うおじいちゃんとかが攻撃してきたら危ないし恐いですよね。
それと同じように仕事をゲームって楽しめる人と楽しめない人がいると思うんですけど、その差ってどういう所だと思います?


平井:いや、実際怖いですよ。リアルに怖いです。いつ潰れるかわからないですからね。でももしそれが単なるゲーム機だったら、絶対被害が身に直接こないでしょ?


淨法寺:そうですね、体に危険が及ぶリスクは無いですよね。


平井リスクが無いってことは全然面白くないんですよ。やっぱリアルなゲームのほうが楽しい。本当に身に迫って、どうなるんだろうみたいな。だから楽しいんじゃないですかね。
で、やっぱ状況とか環境とか配牌とか自分に与えられた・・・、なんていうんだろう?


淨法寺:リソースですか?


平井:そうそう。それが人によって違うでしょ?隣を「ぱっ」て見た時、隣の会社のボンボンが100億くらい持ってるんですよ。おかしいじゃんと。配牌というか、持っているものが最初から違うんですよ。でも100億円あったその会社が潰れるんですよ。うっそーていうくらい恵まれた会社が。
超貧乏で、金無いし信用無いのにリアルなゲームって勝てるんですね。
だから、一番リアルで面白いゲーム=仕事。


『萬屋』(旧ゲーム倉庫)はゲーム・漫画・古着など様々な商品を取り扱っているリサイクルショップ。青森県内に4店舗、北海道と岩手に1店舗ずつ展開している。

萬屋全店舗共通の目標は「365日がお祭りの店」。サービスを通して幅広い年代に楽しさや感動を提供している。写真は萬屋青森東店。2003年にオープンした。


全部良し。日本が世界の手本に

淨法寺:例えば、ゲームにはピーチ姫助けるとかラストボス倒すとか、最終目標があるじゃないですか。社長の最終目標はなんですか?


平井:ただのイメージなんだけど、最近日本が世界の手本になると思ってるんですよ。一番手本になるのに近い国が日本だと思ってる。善悪の世界じゃなくて、全部良しという考え方が。自分にとって都合がいいか不都合かだけで善悪決めて、不都合なものは悪って考え方じゃないところ。
例えば「交通事故が起こった時、相手が悪」ってなるんじゃなくて、あること全部が良いって考えればいい。そうすれば、あっちが悪くて俺が正しいみたいのは無くなるじゃない?その考え方に最も近いことができてるのが日本。それを今言ったゲームの世界、仕事の世界でやったら、それが手本になる。
戦争を無くしようっていうのは無理なの。戦争って無くしようって言って無くなるもんじゃなくて。こっちのほうが楽しいじゃんってことがわかると奪い合うのはやめようかってなる。


淨法寺:何が正しいじゃなくて、何が楽しいかっていうのを基準にすればいいということですか?


平井:誰か正しいっていうのは必ず誰か間違ってるんですよ。
戦争って俺が全部正しいって言ってみんなやってるから。
それよりもこっちのほうが楽しいよねってなればいい。


おもちゃコーナーのディスプレイ。ディスプレイの見せ方は売り場担当のこだわりとアイディアが反映されている。

社員が楽しめるからこそ、自由な発想が生まれる。平井社長が心がけているのは仲間と感動を共有する職場づくりだ。


観光開発の遅れがトップランナー。青森の意外な魅力

淨法寺:日本が世界の手本になるとして、青森は日本の中でどういう役割になると思います?


平井青森の人って欲がないんですね。別にそんなガツガツせんでもいいじゃない?っていうところがあるんですよね。でもだから金じゃないもっと幸せな方法があるよって提案できる気がするここは。
東京では土地を買って家を建てるために死に物狂いになって、ライバルを蹴散らしたり、しかも仲間内まで蹴り倒して上に行こうとする。そういうことしないと家が建てられない。こっちだったら土地は二束三文だから、自分で建築許可さえとれば建てられるじゃん。


淨法寺:お金以外でこの欲で進んでったらいいんじゃないかなっていう象徴的なものはありますか?日本が世界に手本として示す価値みたいなものとか。


平井
何も考えてきませんでしたけど、漠然と相互支援というか、・・・すべてって考え方。メンタリングみたいな考え方で、たった一人で人間は絶対に幸せになれないっていうことにみんなが気づく。
「なんだ隣の人を笑わしたほうが楽しい」ってことに気づくと、この地域は貧乏なくせにえらいみんな楽しそうにしてるやってなると思う。


淨法寺:そうですよね。


平井:普通はあいつ金持ちで、金持ってるから幸せなんだっていう固定概念があるんだけど、そうじゃない幸せが見つけやすい場所。そんな大金持ちいないでしょ青森。100億円持ってる人とか。だから気付きやすい。


淨法寺:こういう話があって、田舎の人に「大変ですか?」って聞くと「大変です」って言うんですけど「幸せですか?」って聞くと「幸せです」って言うんですね。田舎の価値みたいなところって多分これから必要なんでしょうね。


平井:青森って観光開発が最も遅れてるって言われてるんですよね。それがトップランナーだと思ってる。バカな開発をしなかった。しゃかりきになって観光客を引っ張ってこなかった。
十和田湖も綺麗じゃないですか。もしも、もっとすごい数の観光客が押し寄せてたら、十和田湖はとっくに、もっと汚れていると思います。


淨法寺:自然や綺麗な景色が残っている所が魅力と捉えることも出来ますね。作らなくてもいいんですよね、そのままあるもので。


平井:余計な設備を作ると、どんどん楽しくない観光になっていくんですよね。


2011年3月青森市浜館にドラゴンカフェをオープンした。

朝のコーヒー一杯から、ランチ、ディナー、バータイムまでくつろぎ空間を提供する。

女性に人気が高いパンケーキやパスタの他、ステーキランチなどもあり、男女ともに楽しめる空間だ。萬屋とは異なるアプローチだが、お客様を楽しませるというコンセプトを一貫している。

※トップランナー・・・その分野の第一線で活躍している人。ここでは「他より優れている点」という意味に近い使われ方をしている。


笑う門には福来たる!?幸せの秘訣は楽しさだ!

淨法寺:日本の役割、青森の役割ときて、社長の身近な関係者の役割ってどういうところだと思ってますか?


平井:それはマザー・テレサじゃないですけど一番近い人だよね。自分のファミリーを大事にしてカミさんを愛して、子供の人生を奪わずに子供の人生を子供にやらせるっていう。それをやって幸せになってくと、他の人も絶対同じことをやるんですよ。誰かやってうまいこといきました、そうするとこっちのほうがハッピーなんだっていうのが伝わる。お金でもなく見栄でもなく、幸せな顔とかその人の空気で幸せになってく。
幸せな人が一人いるといるだけで周りがなんとなしに幸せになるんですよ、それが空気になってみんなに伝わってく。理屈で説こうとするとみんな喧嘩になってくんですよ、何が幸せかって余計な解説いらないんですよ。


淨法寺:学者みたいに議論したりとか?


平井:そうそう、ヨーロッパってそうじゃないですか。AはBであるみたいな。必ず理屈でくるんですよ。そうするとそれが納得いかない人は受け入れがたいので対立の意見を出してくる。


淨法寺:あえて言葉で表現しなくても、生きててそれが幸せだっていうこと自体が1つの価値になる?


平井:例えばだけどハワイってやっぱ僕ら昔から憧れの地で、行くと楽しいしハッピーになれるじゃない?実はぼく青森空港降りるとですね、ハワイっていう気がするの。周りが空港の建物しか無くて、あとみんな山じゃないですか、緑で。うわー、いいじゃんこれー!って。


淨法寺:私もハワイ好きなんですけど、青森に「寒いハワイ」っていうアダ名を付けてます。


平井:いいねー!いいねーそれ!!


淨法寺:悪い意味じゃなくって、寒いのになんかハッピーな人たちみたいな。


平井:最近、浅虫の海の見える小高いところにコテージ建ててるでしょ? あそこの近所の人たちが「何するのこんな変なところに建てて」って言われたから、「ここをエーゲ海にする」って言ってるよ。


淨法寺:ハワイなんだけど、そこ行くとエーゲ海になるんだ。


平井:そう。ちょっと頭のおかしい人が約一名ここに来たみたいな感じで、奇異の目で見られてるんですよ。だけど、ホントに地元にいる人ってこれがどんなにすごい資産かってやっぱわかんないんですね。そこの土地は500円位の値段らしいんですね。


淨法寺:1坪の価格がですか?


平井:坪300円とか500円。でも僕にとってはここが50万って言われても欲しいんですよ。


淨法寺:たぶん最後の質問になると思うんですけど、これまでちょっと人と変わった生き方とか考え方をしてきて、これから青森の若い人に、もしくは年をとっててもこれから何か始めようとする人になんかメッセージを贈るとしたらどういうことを話しますか?


平井:ぼくが大好きなのは笑うと楽しくなるです。とにかく笑う、笑うと楽しくなる。


淨法寺:笑う門には福来たる、ですね。みんなで笑っていこうよーみたいな。


平井:楽しいから笑うのはやっぱあまりにもあたりまえだよね。
だから、笑って自分が楽しさを作っていけばいいじゃん。正しさはいらない、楽しさを作ればいい。


淨法寺:自分で楽しさを作って人を楽しませればいいというのが、平井社長らしいですね。


平井:最後に言いたい事がある。色々偉そうにしゃべってきたけど、社員には感謝のマシンガンです。ボクは悪ガキで、笑える店を作りたい!って言ったら、彼らが自分達で作ってくれた。ありがとう。


淨法寺:社員への感謝はほんとそうですよね。僕もみんなにはいつも感謝しています。今日は対談ありがとうございました!


萬屋青森東店は青森の東の入り口にあり、三沢市から青森市に帰ってきた私を出迎えてくれます。高校の時から良く行っていた私は、今でもついつい立ち寄ってしまいます。目的があるわけでは無いので、10分で出ることもあれば、1時間以上長居してしまうこともあります。長期休暇のときは、この漫画で時間を潰そうか、あのゲームをやり込んでみようかと、
売り場を見ながらついつい考えこんでしまいます。萬屋に行けば何か楽しいことがあるんじゃないかと思わせてくれる、いつでも童心に還ることができる、そんな場所です。(木村)

対談前には、Jサポートが開催するマネジメント研修に参加した。

マネジメント研修のプログラムの1つである乗馬を体験。乗馬からリーダーシップについての学びを得る。

青森県青森市浅虫は昔から温泉地として知られ、海と山に囲まれた自然のロケーションが綺麗な土地だ。画像は浅虫の沖に浮かぶ島・湯の島。