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青森の魅力について語る人☓人魅力対談

対談006:
青森の魅力たびすけ 合同会社西谷


まちある気で感じる青森の魅力~市民の誇りが創る青森の未来~

たびすけ 合同会社西谷

西谷 雷佐

たびすけ代表。県内各地のまち歩きや体験型観光で先駆者的活動を行い、人材育成にも注力。


Jサポート

淨法寺 朝生

地域の課題を考え、教育とIT、人の力で改善を目指す。



淨法寺:最近、青森県ではなく、自分の住んでいる市町村にアイデンティティを持っている人がほとんどなんじゃないかなと感じているので、今回のテーマを『街の魅力』に絞っていきたいと思います。よろしくお願いします!


西谷:よろしくお願いします!


街の魅力=文化

対談を行ったお店は、三沢市にある居酒屋「和がや」。青森県の新鮮な魚介類が楽しめる。

淨法寺:では、さっそく。西谷さんが思う「街の魅力」ってどういうところですか?


西谷:そうですね。最近では仕事だったり、弘前の路地裏を散歩する『弘前路地裏探偵団』(http://www.rojitan.com/)で“まち歩き”というのをやるにあたり、自分自身が弘前のことを知っているようで知らなかったな、と気づきました。例えば弘前の桜の樹が他の街や県の桜と違ってすごく綺麗で、それはりんごの枝の剪定技術の高さだったり…聞けば「へぇ~!」って思うのだけど、そういった「地元の人間なのに、地元のことを知らない」みたいなことが結構ありました。


淨法寺:うんうん。


西谷:それを再発見する意味でも、今、“まち歩き”がすごく流行っていますよね。今回三沢に来て、私は「三沢のこういうところ面白い!」って思っているのに、言われるまで住んでいる人が気付いていなかったり…


淨法寺:例えば三沢でいうとどういうものですか?


西谷:まず始めに英語の看板とかポスターでしょう!すぐそこの商店街で日米友好を感じられる。アメリカと日本の旗がシャッターに描いてあったり、飛行機のモチーフがあったり、あとご飯を食べていたら向かいに外国の方がいたり…あと意外と簡単にドクターペッパーが手に入ったり(笑)これは弘前にはないですね。


淨法寺:そうなんですよね。


西谷:弘前に行くとお城があって、城下町で道路がマス形になっていたり…そういうのって三沢にないと思うんですよね。アイデンティティ…つまり文化だと思うんです。街の文化というものを改めて見直してみて、掘り起こしているという動きが、“まち歩き”というコンテンツとして今増えてきていると思います。ここら辺でも八戸も含め階上(はしかみ)も三戸も…


淨法寺:階上でいうと例えばどんな文化がありますか?


西谷:階上はですね、階上で“まち歩き”をしようってなった時に「本当に何もないよ」って言われていて。「何もないよって言われても何かはあるんですよ」って言ってはいたけど、実際に階上のまちを歩いてみたら、本当に何もなくて(笑)海しかないんですよね。でもじっくり掘り起こしたら、階上は“海に暮らす人の街”なんですよね。だから街の至る所に"ここは海抜何メートルですよ"って書いてある。三沢を歩いていても弘前を歩いていてもこれはないですよね。万が一、津波が来たときはここより高い所へ避難してくださいっていうのが普通に書かれてある。そして最盛期になると、ウニがたくさんあがるんですよ。ウニのためのウニ小屋があるくらい。あがったウニを地元の漁師さんが殻をむくためだけの小屋があって…それって内陸の町には絶対ないでしょ?


淨法寺:言ってしまえばただの小屋なんだけど、ウニの殻むきをしている漁師さんの生活が見えると文化になるってことですね。


西谷:そうそう。あと階上の小学校は校庭に家があるんですよ。昔は校長先生が住んでいたそうなんです。つまり赴任してきた時に、必ず階上出身の人が校長先生になる訳ではないから、住む場所が必要で、階上の小学校ではその宿舎が校庭にあるんです。現在は使われていないんですが、その宿舎が取り壊されず、今も校庭に残っているんですよ。当時は単身赴任している校長先生に近所の保護者の方が魚を持ってきてくれたり…それって文化ですよね。弘前にも校長先生が他県から来ても校庭には住まないし、近所の保護者の方は魚を持って行ったりしないですよね。海に暮らす街独自の文化があっておもしろかったです。


淨法寺:文化は文化人のような人にしか分からない難しいものじゃなくて、当たり前の生活の中に根ざしているものなんですね。


西谷:そうですね。だって三沢でいう“チーズロール”も文化でしょう?弘前で街歩いていてもチーズロール屋なんてないですよ。


淨法寺:そうなんですよ。チーズロールでおもしろいのが、チーズロールって三沢にいるアメリカ人の間で大人気になってソウルフードになったんですけど、アメリカ人はチーズロールに醤油を付けるんですよ。で、日本人はケチャップを付けるんです。


西谷:へぇー!おもしろいですね~!


淨法寺:そうなんですよ。日米の良いとこ取りみたいな感じでおもしろいですよね。


西谷弘前の食べ物で言ったら“あさか餅”かな。普通にあんこが入った白い餅に揚げた米が付いているんですよ。米on米みたいな(笑)


淨法寺:どれだけ米が好きなんだっていう(笑)


(一同笑い)

西谷:それも文化でいうと三戸とか八戸だとひっつみ(すいとん)とか、米が手に入りにくい地域だったから小麦粉を主食とする食生活が多くて、それがそのまま郷土料理とか地元の料理になっていたりして…だからおもしろいと思うんですよ。一言で青森って言っても南部と津軽で全然違うし、そういった意味でも改めて「青森って魅力がいっぱいある」って思うし、掘り下げていけばどんどん色んなものが見つかるおもしろいところだなぁって思いますね。


三沢のまち歩きを始めて信号待ちの時間もおもしろいもの探しに余念がない西谷さん。目の前に広がる風景でなく上を見上げて探す目は、まるで宝探しでもするかのようにわくわくして見える。

西谷さんが所属している「弘前裏路地探偵団」。
青森の魅力にもその活動の模様が掲載されている。
魅力No.1829「それゆけ、路地裏探偵団 ~弘前の「裏側」を探索せよ!~前編」と魅力No.1833「それゆけ、路地裏探偵団 ~弘前の「裏側」を探索せよ!~後編」(特派員akkyさん投稿)



(上)米軍三沢基地正面ゲート前に向かって歩きだす二人。
(中)市民、米軍、自衛隊が共存する街を象徴する米軍三沢ゲート前の看板。
(下)三沢基地入り口前にはアメリカンバー、インド料理などの多国籍料理屋などアメリカの雰囲気が漂う。

三沢のソウルフードである「チーズロール」。春巻きや餃子の皮にチーズを入れて巻き、揚げたもの。
魅力No.140「三沢のソウルフード!!」(特派員マメタロウさん投稿)

弘前のソウルフードである「あさか餅」。津軽特有のお餅。


“あるもの活かし”の着地型観光

淨法寺:今、“まち歩き”とか“着地型観光”というので、私の中では“たびすけ=着地型観光”っていうイメージでいるんですけど、着地型観光のターゲットの中には、県内の人にも気付いてほしいっていうのがあるのでしょうか?


西谷:そうですね。今だと『りんご箱ツーリズム』というのをやっていて、りんご箱を"観光コンテンツ"にしてツアーを実施しています。これは地元の方というよりは県外の方をターゲットとしていて、東京に行くとりんごの箱をディスプレイとかで使っているんですよね。東京ヒカリエでもやっていて、それでりんご箱自体に注目が集まっているけれど、地元の人にとっては「りんご箱、何に使うの?」って感じでしょう?りんご箱って、りんごを入れて、壊れたら薪にしてみたいなものだと思うんですよね。でもりんご箱を作る職人さんがいて、その作る様子を見て、作られたものがヒカリエの展示みたいにどんどん積み上げてディスプレイされているのがおもしろいし、実際に小さいりんご箱を作ってみて、それに実際自分がもいだりんごを入れて贈答用に贈るっていうのだけでも観光コンテンツになる。
それって“あるもの活かし”ですよね。「りんご箱」ってもとからあるけれども、それはりんごを入れるだけだったものを観光コンテンツという風に切り替えた時に、東京の人が喜ぶ観光資源になるというわけです。
その一つの例で、冬のりんご畑に行くというのにしても、白神山地に冬入って行くというのにしても、“津軽ひろさき雪かき検定”というのもやっているけれども、捉え方とストーリーの作り方次第で素晴らしいコンテンツになるんですよね。地元の人にしてみれば雪かきは辛いもので毎日やる当たり前のもの。でも県外からお金を払ってまで雪かきをしたいという人がたくさんいるんですよね。


淨法寺:大阪から「雪かきしたい」って言って来る人もいますよね。


西谷:そうそう。そういう掘り起こせるものやポテンシャルは、弘前に限らず三沢にも山ほどあると思うんですよね。


淨法寺私も“ないものねだり”の街づくりや地域活性って盛り上がっているのを見たことがなくて、例えば「駐車場がない」って三沢市は文句言われているんですけど2億円で駐車場建てて誰も使ってないという…そういうのって結構あるじゃないですか。“ないものねだり”はダメだなってわかりますし、もちろん“あるもの活かし”で成功しているところがたくさんあるなって思いますが、西谷さん自身はどうして“あるもの活かし”の着眼点にたどり着いたのですか?


西谷:まず一番は単純に弘前が好きだからですね。弘前には、桜があって、洋館があって、ねぷたがあって…自分は大好きなんだけど、自分の感情の高まりほど周りの人は弘前の良さを実感していないなって。その温度差に「なんでだろう?」って思っていました。そう考えた時に「伝えるのが下手なんじゃないか」って。『弘前といえば“ねぷた”“桜”』と言われているけれど、そのねぷたと桜ですら県外の方や旅行が好きな方に伝わってないのではないか。実際に体験してもらえればこんなに良い街なのにもったいないですよね。そうなった時に、「弘前と言えば『桜とねぷた』は知っているけれど…あとりんご?他には何もないでしょ?」って言われる事があるんですよね。そんなことないでしょう!洋館も素晴らしいし、伝統工芸も素晴らしい。でも知らないから、伝わっていないから、体験していないから、弘前はまだまだ損をしているのだと思います。そう思うとITやWebを使って何ができるか、さまざまなところで連携していかないといけないと思うんですよね。
「もったいない」「こんなにいいものなのに伝えきれていなくてもったいない」っていうのが地元に着眼した理由です。旅行会社だからヨーロッパやアメリカへのツアーも企画できるし、その方が見た目華やかだけど、やっぱり自分は『着地型』だな、と。自分の地域のことを知ってもらって人を呼ぶことができないのに、アメリカもヨーロッパもないなって。


淨法寺:うんうん。そうなんですよね。まさにそう思います。私は県内旅行を薦めたくて、キャッチコピーを2年前くらいから考えているんです。「ハワイへ行こう!韓国へ行こう!いや、青森行へこう!」「えー?!青森??」みたいな(笑) 京都だったら「そうだ、京都へ行こう」だけど、青森は「えー?青森??」がキャッチコピーで、県内の人が青森旅行を楽しんじゃっているっていうのをやりたいなってずっと思っているんです。


西谷:いいですね。


淨法寺:西谷さんが弘前以外で県内の人をどこか連れて行って「どうだ!」みたいに自慢するとしたら、どこに連れて行って何を自慢しますか?


西谷今はね、鶴田町押し!


淨法寺いや、そこは三沢って言って欲しかった…(笑)


西谷:あ、三沢。ごめんごめん(笑)


淨法寺:いや、鶴田でいいです(笑)鶴田のどこがいいですか?


西谷鶴田は街が本当に鶴だらけでおもしろいんですよ。でも、これは自分の中の結論なんだけど、“最後は人”なんですよね。「三沢に行きたい」というよりかは「三沢にいるあの人に会いたい」になって、「弘前のお城が好き」とか「桜が好き」とかじゃなくて、「弘前に行けば西谷さんがいるよね。西谷さんが案内してくれるから、連れてってもうお蕎麦屋さんおいしい、ラーメン屋さんおいしい」になると思うんですよね。鶴田には今、「岡詩子」というおもしろい人間がいるんですよ。だから鶴田を押しているんです。


淨法寺:岡さんが“鶴レンジャー”の中に入っていると思ったんだけど違ったんですね(笑)


西谷:あ、“鶴レンジャー”じゃないです、たぶん(笑)でもね、“まち歩き”が始まる前まで、彼女も地域では少し変わったおもしろい人物だったと思いますよ。淨法寺さんもきっとそうだし、私も弘前にいたらきっと少し変わった人間なんですよ。でもそうちょっとバカやっているじゃないけど、変わった人間の周りに仲間が集まってきて物事が動いていくのかなって思う。


淨法寺:あ~おもしろいですね。


西谷:そうすると今まで注目されていなかったものが注目されるようになっていく可能性が高まるような…


淨法寺:その「変わった人達」の共通点が何かあると思うんですよ。これから求められているもので、今までは「え?」って思われるものでも…それって何だと思いますか?


西谷:自分のこと分析してごらん(笑)


淨法寺:いや、それがわからないんですよ


(一同笑い)

淨法寺:(しばらく考えて)…何か大きな欠陥を抱えている


西谷:うん、それはあるかもね(笑)


(一同笑い)

淨法寺:何でしょうね?岡さんとか島(あおぞら組・島康子)さんとか…


西谷:うんうん。私が思うのは…『根拠のない自信』


淨法寺:あー!わかります!!


西谷:一番最初“たびすけ”はバリアフリー旅行から始まったんですよね。お身体の不自由な方を旅行にご案内するってなった時に「そんなのうまくいかない」ってみんなに言われたんです。「車いすで旅行行きたい人何人いるの?」「車いすでどこいくの?」「何かあったらどうするの?」と、たくさん言われました。でも健康な人間二人で旅行してもイタリア行っても何かある時はある。同じなんですよ。「いや!車いすでも行きたい人はいるはず!」…これ根拠のない自信ですよね。実績もないし分析もないんですけど「いや、ある!」。そういう時あるでしょ?


淨法寺:そうそう。根拠のない自信があるから、本当に道に迷うんですよね(笑)例えばイタリアに二人で行って、でもそれも楽しいんですよね。


西谷:で、結果言葉に情熱が乗るんですよね。結果、その言葉に心揺さぶられる人も出て来るんですよ。「根拠ないしできなそうだけど、あなたの目を見ていたら何か応援したくなる」みたいな。ありがたい事にそういってくれる方が周りに一人二人増えてそれが今のスタッフなんですよ。…ヘンな社長だけど想いに賛同してくれてそこで働いてくれていて…淨法寺さんのところもそうでしょ?


淨法寺:……はいあの~…(社員を見回す)


(一同笑い)

西谷:間があったけど(笑)だから突き詰めていくと、突飛でもそこに何か分からない「絶対できる」という自信が必要。有言実行とはよく言ったもので、言葉に出して「これはできる」「こうなりたい」「こうできるはず」って言っているとそうなるんです。心で思っているだけではならないけど、口に出すとそうなるような気がしませんか?


淨法寺:いや、本当そうなんですよ。今『乗馬研修』っていうヘンな研修をやっていて、10年後くらいにできていたらいいなって思っていたんですが、やりたいって口に出したら半年くらいでプログラムができあがってしまって、一年後に研修できちゃったんですよ。イメージするのが大事ですよね。イメージして、できるなって思ったら言葉に出して…そしたら本当にそうなっちゃう。


西谷:言わないとダメですよね。言ったらやらないといけなくなるから。でも「面倒くさいから…」とか、「言ったらやらないとダメだから…」と言ってやらない人は多いけど、勢いで言ってしまって、やらないといけなくなってやった結果、実績が積まれていくこともあると思うんですよね。


美しい岩木山を眺めながらのりんごもぎも重要な観光コンテンツとなる。
魅力No.334「RINGO・RINGO・RINGO」(特派員ゆ~みんさん投稿)

美しい色彩で描かれる扇型のねぷたが街を練り歩く「弘前ねぷた」は青森の三大夏まつりのひとつ。
魅力No.1842「復興祈願「青森四大夏祭り」①弘前ねぷた「特別運行」」(特派員たがまぁさん投稿)

弘前市民から愛される「弘前城」はどの季節に訪れても感動と発見がある。
魅力No.176「うしろのしょうめん、だあれ」(特派員akkyさん投稿)

青森県を代表する弘前の桜。歴史的建造物と一緒に楽しめる。
魅力No.239「東北一の美塔と桜」(特派員new_rockさん投稿)

全国でも類を見ない、塗りと磨きを追求する「津軽塗」。
魅力No.1268「こだわりの津軽塗~弘前市津軽塗商工業協同組合~」(特派員konsayakaさん投稿)

岩木山の麓・標高約400~500メートルの嶽地区で育った甘みが強い「嶽きみ」(とうもろこし)。
魅力No.1510「IWAKI~食~」(特派員ゆ~みんさん投稿)

「五穀豊穣」「家内安全」を祈願して岩木山に登拝する重要無形民族文化財「お山参詣」。
魅力No.341「お岩木山deサイギ~サイギ~初体験♪」(特派員KAYOさん投稿)

北津軽郡鶴田町にある「鶴の舞橋」は、全長300メートル、“日本一長い木の橋(ながいきのはし)=日本一長生きのはし”の所以からパワースポットとしても注目されている。



街の至る所に鶴のマーク。
魅力No.566「天気がいい日は近所の公園に出かけよう!~鶴田 桜づつみ公園~」(特派員あららさん)
魅力No.7「街灯シリーズ@鶴田町」(特派員いっちーさん投稿)

西谷さん絶賛の鶴田町「TSURUTA街プロジェクト」 代表・岡詩子さん。
まるごと青森×青森の魅力で2013年10月11日配信のUstream「ライブdeずっぱど青森」にも出演。赤、白、黒の衣装が目印。


「人」の魅力は「街」の魅力

淨法寺西谷さんと一番初めにあった時にすごいなって思ったのが、VISIONを聞いてすごくわくわくしたんですね。弘前の“まち歩き”とバスの提案の時に、局所的にですが「この人おもしろいことを起しそうだな」って思ったんです。もう、この人に付いて行きたくなったんですよね。西谷さんが思う青森の希望やVISIONみたいなのを教えて頂けますか。


西谷“たびすけ”がやっていることは、結果的に街づくりになって地域が活性化していくと思っているんです。“たびすけ”のブランドって、旅行会社だけど他の大手さんと違うところは、『バリアフリー旅行』と『着地型観光』なんですよね。ブランドって『お客さまとの約束』。それを見てお客様は「“たびすけ”なら安心安全に車いすの旅行にどこでも連れて行ってくれる」「外に行くのではなくて、東京とかから弘前に来た時に詳しく案内してくれる」っていうのが一つ一つ積み上がって行った時に、最終的に「“たびすけ”に」じゃなくて「西谷さんに」「(“たびすけ”スタッフの)三上さんにお願いしたい」になっていくんですよね。Webの事でも何でも「Jサポートだから」じゃなくて先に「淨法寺さんだから」「中里さんだから」になるわけですよ。そうやって人が育っていくと、結果的に人が魅力的な街だから弘前が、三沢が魅力的になっていく。だから今Jサポートでやっている研修とか素晴らしいと思うし、一人ひとりの人材育成とか教育が大切。それが若い人だけではなくて、新人や新入社員、中堅社員とか全員が『for青森(青森のため)』の意識を持っているのがいいと思うんです。


淨法寺:あ!出ましたね!キーワード『for青森』!


西谷:根底にある“自社のため”“自分のため”“利益のため”“休みがほしいから”じゃなくて、それが構成要素のひとつであってもいいけど、自分達が青森に生まれて『for青森』っていう気持ちで働ける人材が育っていくのが最終的にたどり着くところじゃないかなと思います。それが青森の着地点じゃないかな。


淨法寺:ね!わくわくするでしょ?(青森の魅力スタッフに向けて)


(一同深く頷く)

西谷:難しいですけどね。でも誰かがやらないと。例えば、三沢では淨法寺さんが、弘前では私がやっていっているうちに自然にこう…


淨法寺繋がってきますよね~


西谷:そう!今ひしひしと感じているもん。みんな繋がっていくよねって。で、みんな左向いている時に自分だけ右向いていても「何をやっているの?」って思われるけど、そのうち10人が右向いて100人が右向いて1000人が右向いた時に、「あれ?右に何かがあるの?」って右向くでしょう?いきなり1000人向かせるのは難しいけど、でも0と1は違うわけだから。同じ志を持った人が、それは「旅行業界だから」「IT業界だから」とかじゃなくて、『for青森』というところで旅行もWebも農業も全部右向いた時に右向かって行くんじゃないのかな。それが弘前の想い描く着地点。


弘前と三沢で住む場所が違っても、同じ青森に生まれて地域の活性化について言葉を交わす二人。話をしているうちに自然と笑みがこぼれる。

「“for青森”の意識を持って一人ひとりが輝くと街も魅力的になっていく」と語る西谷さん。

西谷さんが熱く語る青森のVISIONにわくわくする淨法寺。


市民が自分の住む街に誇りを持つ『シビックプライド』

淨法寺:最後なんですけど、さっきまでのお話は“for青森”じゃないですか。以前研修でお話してくださった“ミュンヘン”のお話を聞かせてください。


西谷:その話は最終的に“シビックプライド”というところにたどり着くんですけど…


淨法寺:シビックって何ですか?


西谷シビックとは「市民の」を意味します。“シビックプライド=市民の誇り”。淨法寺さんは三沢が好きでしょう?私も弘前が好き。“この街が好き”の上に行くのが「三沢に誇りを持っている」「弘前に誇りを持っている」というところなんですよ。


淨法寺愛ですね。


西谷:そう、愛。“LikeじゃなくてLove”ということです。そうなると街が他人事じゃなくなるんですよね。自分事になった時に“You are your town(あなた自身が街である)”“I am my town(私自身が街である)”になる。私自身が三沢を構成する一要素であるという風に、すべての人が考えた時に自分の家の前にゴミが落ちていたら拾うけど、三沢基地の前にゴミが落ちてても拾わないでしょ?でもそういう感覚になった時に基地の前でもゴミを拾うようになるんですよね。


淨法寺ゴミ捨て禁止ってポスターがなくても、街がキレイになるってことですね。


西谷:そうそう。それこそミュンヘンでは「ゴミ捨て禁止」とか「芝生に入ってはいけません」「芝生で寝転んではいけません」ではなくて、「芝生で寝転んでいいですよ」「芝生で犬を散歩させていいですよ」という『いいですよ』という表現になっているんです。街と人間との信頼関係ができているから禁止という看板がミュンヘンにはないんですね。そうなっていたら最高だよね!


淨法寺:いいですね!


西谷:“I Love NewYork”というロゴとか見たことがあると思いますが、ミュンヘンでは“München Loves You(ミュンヘンはあなたの事を愛しています)”というロゴがあるんですよね。Münchenとは、「そこに住む人のこと」で、Youとは、「そこを訪れてくれる人のこと」。そういう意識という点では、ミュンヘンをはじめ、ヨーロッパの国々は最先端を行っているのかもしれませんね


淨法寺:そうですね。決まりだらけの会社とか、決まりだらけの街って嫌だなって思います。


西谷:「これはしてはいけません」「ここに入ってはいけません」制限や禁止ではなくて、それを置き換えてもいいから「これをしてもいいですよ」「ここまではOKです」とするとそれは教育的にもいいですよね、その街で育つ子供としては。「ダメダメ」で縛るんじゃなくて、「これもしてもいいよ」「これはしていいよ」と言われるとその中で自分で考えて「これはしてはいけないんだな」と学習する訳です。順番だけの話で、でも今のミュンヘンみたいな例が弘前や三沢、青森までそうなっていけばいいなって思います


淨法寺まさに教育ですね。


西谷:大切ですよね。


淨法寺:ではこれを機会にひとつ青森への宣言をお願いします!


西谷“AOMORI Loves You”のAOMORIとは「青森に住む人全員」で、Youは「青森を訪れる人全員」。


淨法寺:Youの中に県民も含まれるんですか?


西谷:もちろん。県民はどちらにも入っています。場所とか観光地とか一部の人だけではなく、そこに暮らす人全員が『all for青森』(われわれ青森がお待ちしております)という気持ちで街の魅力を発見する。そうなった時に民度が高くなると思います。


淨法寺:なるほど~、今日は楽しいお話ありがとうございました!


西谷:ありがとうございました!


今回は、西谷さんと三沢の“まち歩き”を通して、改めて三沢市の魅力をたくさん発見することができました。自分の住む街が魅力的だと気が付くと嬉しい気持ちと同時に街への誇りが持つことができる“まち歩き”、今後も大注目です。今度は弘前の“まち歩き”で弘前の魅力に迫りたいと思います!

“München Loves You”の標語を持つドイツ・ミュンヘンの街の風景。人口130万人でありながら旅行客を温かく迎え入れるそのおもてなし風土から「人口130万人の村」といわれている。

もともと米軍が物資輸送に使用していた線路であり、2006年に廃線となってから再利用のため整備。現在、一般開放されているこの遊歩道は、日米友好の象徴として「フレンドシップロード」という名が付き、イベントの会場としても活用されている。