「青森の魅力 meets 矢口監督 Vol.1」はいかがだったでしょうか。
スペースアストロでの舞台挨拶のあと、私たち魅力取材チームは、矢口監督に直接お話をうかがう事になりました。
その前に、監督のプロフィールを紹介します。
矢口史靖(やぐち しのぶ)さん
神奈川県出身。東京造形大学入学後に8mm映画を撮り始め、在学中に制作した『雨女』が1990年の「PFF(ぴあフィルムフェスティバル)アワード1990」でグランプリを受賞。 1993年の『裸足のピクニック』で劇場監督デビュー。主な作品は『ひみつの花園』『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』『ハッピーフライト』。 そして、来年1月14日公開の映画『ロボジー』では、監督と脚本を手がける。
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ここからは、矢口監督への「青森の魅力」独占インタビューとなります。
聞き手:すきとおる、写真:たがまぁさんでお送りします。
■映画制作について&『スウィングガールズ』について
――矢口監督が映画を作るようになったのは、どんなことがきっかけだったのですか?
大学入学時にサークル勧誘のPR合戦がありまして、その中に「映画研究会」の上映会があったんです。その映画がかなり面白くて…。それを作られたのが、1年先輩の鈴木卓爾さん(映画監督・脚本家・俳優)だったのですが、その方が8mmフィルムで映画を作っている光景が楽しそうだったんです。それで「映画って、観るだけじゃなくて、作っても良いんだ!」ということに気が付きました。そして僕も映画研究会に入って、映画を作るようになりました。
――映画の制作において、こだわっている点は何ですか?
自分が客として劇場に足を運んだとしたら…“これぐらい楽しいものを見たい!”とか“面白いものを見たい!”とか…。そういった“娯楽としての面白さを出そう!”という事を常に考えています。
――ここからは『スウィングガールズ』についてうかがいます。この映画の見どころは、出演者17人全員が実際に楽器を演奏していることですが、何故、生の演奏にこだわったのですか?
生演奏のほうが、撮影が楽だから!それが大きな理由です。女子高生役の子たちに、楽器を吹いているフリなんて、させたくなかったので…。だったら、本当に吹けるようになれれば、絵的にも音的にも問題ないし、手っ取り早い!というのがありました。それともうひとつ。「映画なんだから、吹き替えは当たり前!」という先入観をもっているお客さんに対して、より強いインパクトを与えるためでもあります。「実際に演奏しているんだ!」と判れば、映画の魅力としてプラスになるのでは、と考えました。
――主役クラスの俳優さんは、楽器の経験すらなかったとのこと。人前で演奏出来るようなレベルになるまでは、ご苦労も多かったと思います。その辺りのエピソードを聞かせていただけますか。
役者さんには、実際に演奏出来るようになるまで、クランクイン前の3カ月間、ずっと練習をさせました。3カ月たって「さぁ、クランクインです!」っていう時に、映画に堪えうる演奏が出来たかといえば…実は間に合わなかったんです。なので、撮影に入った後も、出番が終わった子から順に、ロケをしていた学校の体育館に移動して、ずっと楽器の練習をしていまして、まるで部活の合宿のような感じでした。
――役者さんによって楽器の習熟度が違うと思いますが、いちばん早く楽器を覚えた方は、どなたですか?
平岡祐太さん(中村拓雄役=ピアノ)。彼はギター演奏の経験があったのですが、鍵盤楽器は全くのド素人でした。でも、あっという間に覚えてしまいました。
――逆に、いちばん遅かった方は?
貫地谷しほりさん(斉藤良江役=トランペット)。彼女の口は“アヒル口”で、トランペットには向かない口なんですよ。「別の楽器にしたら(良いのでは)?」と楽器の先生にも言われたのですが、僕が「いや、彼女にはこのキャラクターでやってもらいたいんです!」と言って、半ば強引にトランペットを習得してもらいました。
――この映画は、山形県でロケを行いました。その時のお話を聞かせてください。
(2003年7~9月と2004年2月に、それぞれ夏のシーンと冬のシーンのロケを行っている)
映画の後半、冬のシーンがその大半を占めているわけですが、実は冬のシーンはわずか10日間で撮り終わっているんです。夏のシーンの間に冬のシーンを撮った、というのが、かなりあります。クライマックスのホールでの演奏シーンも、夏のロケの最後のほうに撮りました!
――あのシーンが夏に撮られた、というのは信じられないんですが…メガネを曇らせたり、雪をはらったりっていうのは、どのようにして演出されたのですか?
メガネを曇らせるのは、特殊な塗料を使いました。雪は、紙おむつの中に入っている吸収剤を取り出すと雪のように見えるので、それを使いました。
――不安だった楽器演奏のほうは、どうなりましたか?
クランクインまでは、お芝居の練習は全くさせず、楽器の練習に集中させていたので、役者さんはきっと“私たち、映画に出るんだよね?”って事をぼんやり思っていたと思います。でも撮影が始まってからは“あ、映画の撮影に来ているんだ!”という自覚がモチベーションを高め、上達がものすごく早くなって、なんとかクライマックスの演奏シーンに間に合いました。
ここまで『スウィングガールズ』の思い出話を語っていただきました。
7年ほど前の映画なのに、まるで昨日の事のように語る矢口監督。
その言葉ひとつひとつに、映画への思い入れが詰まっているように感じました。
インタビューは、さらに続きます。
■矢口監督が語る「青森の魅力」
――矢口監督の思う「青森県」のイメージは、どんなものでしょうか。
雪!それと、りんご…は普通すぎるので…
ストーブ列車、あとは…方言!ですね。
――2004年8月30日に『スウィングガールズ』のキャンペーンで、監督は役者さんとともに南郷村(八戸市南郷区)に来ています。「南郷ジャズフェスティバル」のスペシャルステージに出演したのですが、その時には、どんな事を感じましたか?
「夏の青森でジャズフェスティバルをやっている」という事を知らず、いきなり行ってみたら、山盛りの(たくさんの)お客さんがいて…その中で演奏出来たのが、非常に印象深く、心に残っています。この日は、お客さんのノリも良かったし、演奏も最高でした! なので、南郷村は思い出深い場所です。
――今回お会いできたことを機に、次回の映画のロケは、是非、青森県内でお願いできないでしょうか?
そのお気持ちは、受けさせていただきます。
「南郷は思い出深い場所」と監督に言っていただいた事は、県民として嬉しかったです!
いつか矢口映画のロケを青森で…。そう願います。
今回はここまでとなります。
次回は、矢口監督待望の新作となる、
来年1月14日公開の映画『ロボジー』について、うかがいます!
どうぞ、お楽しみに!
(「青森の魅力 meets 矢口監督 Vol.3」につづく)