「矢口監督インタビュー・前編」はいかがだったでしょうか。
監督の映画制作に関するこだわりや、作品に対する思い入れが伝わったことと思います。
さて、前作『ハッピーフライト』から3年余り、矢口監督の待望の新作となる、
映画『ロボジー』が1月14日より公開になります!
ストーリー(『ロボジー』公式サイトより引用)
家電メーカー、木村電器の窓際社員、小林・太田・長井の3人組は、ワンマン社長から流行の二足歩行ロボットの開発を命じられていた。近く行われるロボット博での企業広告が目的だ。
しかし、ロボット博まであと1週間というところで、制作途中のロボット“ニュー潮風”が木っ端微塵に大破!窮地に追い込まれた3人は、ロボットの中に人間を入れて誤魔化す計画を立てる。
ロボットの外装にぴったり収まる人間を探すため、架空のオーディションが開かれ、仕事をリタイアして久しい独り暮らしの老人・鈴木重光(73歳)が選ばれる。しかし、この鈴木がとんでもないジジイで…。
さらには、“ニュー潮風”に恋をしたロボットオタクの女子学生・葉子も巻き込み、事態は思わぬ方向へ転がり出す―。
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ここから、矢口監督への「青森の魅力」独占インタビュー・後編をお送りします。
最新映画『ロボジー』について、直接お話をうかがいました。
前回同様、聞き手:すきとおる(一部除く)、写真:たがまぁさんでお送りします。
■『ロボジー』への想い
――構想から撮影終了までの期間は、どのくらいでしょうか。
2006年に既に構想が出来ていて、途中「ハッピーフライト」の撮影があって、2011年2月撮影終了なので…あとは計算してください(笑)
――構想から撮影終了まで5年の歳月をかけたということですね。『ロボジー』というタイトルから連想すると…ロボットが主役の映画ですか?
ロボットが主役の映画というよりも、ロボットがモチーフの映画だけど、描かれるのは「ジジイ」ですね。
――(魅力スタッフY氏)言葉としては「お爺さん」ではなく「ジジイ」というのが大事なんでしょうか?
「お爺さん」だと「ロボ・オジイ」になっちゃいますね(笑)。なので「ロボジー」なんです。
――(魅力スタッフN氏)これを、すごくワクワクしながら見ていて…(と、監督の前に置かれたロボットを指し、)この設計やデザインは矢口監督が携わったのですか?
はい。その設計やデザインには深々と、参加しました。
――(ロボットの)ココにこだわった、という部分は、ありますか?
「最新鋭のロボット」ではなく、中古みたいにしたかったんですよね。
たとえば、頭は炊飯器をひっくり返したような感じ、胸の部分はガスメーターのフタ、
普通の家庭によくあるものを合体させて作ったんですよ。
見た人が拒絶反応を起こすのではなくて「あ、懐かしいかも!」って思って、皆に受け入れてもらえるような、そんなデザインを目指しました。
――矢口監督は、映画制作にあたり毎回「取材」を行う、と聞いていますが、今回はどちらに行かれましたか?
今回は、大阪大・慶應・早稲田の各大学の、理工学部でロボット研究をしているゼミの生徒さんや先生にお話を聞きました。それと(この映画にご協力いただいている)企業・団体・工場に伺いました。あとは各地で行われている「ロボット展」にも足を運びました。
■五十嵐信次郎さんについて
――オーディションで200人超の中から、五十嵐信次郎さんが選ばれました。73歳の五十嵐さんを選ばれた、そのポイントはどこにあったのでしょうか。
ポイントは「健康」です!(笑)プロからアマまで、たくさんのお爺さんをオーディションに呼んだのですが、当日、欠席者が多かったんです。理由を聞いてみると…どうも病欠(病気による欠席)だったんです。それで「この映画は、単に『お爺ちゃんが主人公』という見方だけで選んじゃいけないんだ」という事に気付き、ロボットスーツを身に着けて寒さに耐えてもらうには、撮影途中でリタイアするような事があってはいけないので…。そこで見つかったのは、いつも元気にライブをやっているロカビリー歌手の(「ミッキー・カーチス」として知られる)お爺ちゃんでした。
――ロケは、昨年1月と2月に、北九州市で行われました。その時の事を聞かせてください。
北九州を選んだ理由ですが、お爺ちゃんは寒がりなんで、なるべく暖かい所が良いだろうと思って、西のほうを選んだんです。ところが、冬の北九州はものすごく寒くて…。初日でもマイナス2度で、雪が何日も降り続いていて、「殺す気か」と(五十嵐さんから)笑いながら言われました。そんなつらい日々を、五十嵐さんは固いロボットスーツに身を包んで、撮影に挑んでいただきました。
――撮影中の五十嵐さんのことを、話していただけますか?
五十嵐さん演じる、鈴木重光という爺さんは、「汚い」「うっとうしい」「クサイ」と言われ、孫たちにも嫌われるような、そこら辺にいそうなダメな爺さんなんです。
それを彼に演じてもらうために、相当な「改造」を施しました(笑)。髪の毛を切り、ヒゲを剃るだけでなく、猫背にさせたり、歩幅を狭くさせたりして…かっこいいミュージシャンのお爺さんを、そこら辺の日本人の爺さんに「変身」させました。それが非常にうまくいって、ミッキー・カーチスという人を知っている人でも、気付かないまま映画を見終わってしまうかもしれません。
この変身ぶりには僕も五十嵐さんも満足していました。「名前を変えよう」という話も、撮影後半に僕のほうから持ちかけて、五十嵐さんも「面白いじゃない!」と言っていただき、さらに「ここまで変身したので、新人のつもりで挑んだ。だったら『五十嵐信次郎』という名前はどうかな?」と言っていただきました。
それで「謎の新人俳優・五十嵐信次郎」となりました。
■テーマ曲「MR.ROBOTO」への想い
――テーマ曲に「MR.ROBOTO」(ミスター・ロボット=スティクスが歌った、1983年の全米ヒット曲)をカバーされていますが、そのいきさつを聞かせてください。
昔から知ってた曲ではありましたが…これをテーマ曲にしようと決めたのは、撮影が終わる頃でした。
知ってた歌詞は、冒頭の日本語だったのですが、この部分だけを聞いて「この映画のエンディングにピッタリだ!使いたい!」と思って、テーマ曲にしようと決めたのですが、プロデューサーから、さまざまな理由で「無理!」って言われました。それでも「イヤだ!」って何度もゴネて、その度に「無理!」と言われ続けました。
――では、なぜ実現したのですか?
ある日突然プロデューサーから「OK出ましたよ!」と言われたんです。ひそかに(原曲の使用に向けて)交渉してくれたみたいですね。でも「原曲ではなく、カバーならOKみたいですよ」と言われて「それじゃあ!五十嵐さんに歌ってもらいましょうよ!」って事になり、トントン拍子で、テーマ曲の制作が決まりました。
映画『ロボジー』にまつわるエピソードを語っていただきました。
曲が「MR.ROBOTO」に決まって、そこで初めて、すべての歌詞の和訳を見ました。それがこの映画のテーマ曲としか考えられない内容で、
「日本製のロボットが人間を助けてくれる」「制御出来ないロボット」…
これらのフレーズに驚いて…スティクスは、この映画の事を予見していたのではないか!と思えたほどでした。(テーマに決まり)大満足です!
この「MR.ROBOTO」は「五十嵐信次郎とシルバー人材センター」の皆さんがカバーし、映画の中でも流れます。是非、音楽のほうも聴いていただきたいと思います。
■「青森の魅力」をご覧の皆様へのメッセージ
「ロボットとジジイ」と聞いて「それは架け合わせられない!」というぐらい遠いモチーフだと思われるでしょう。しかし、この映画では、その2つが混じる事で「混ぜるな危険」みたいな(笑)、化学反応が起きたと思います。
笑える、だけではなく、なぜか最後にはジーンと胸が熱くなる、そんな感動までお客様を連れていける映画になったと思います。『ロボジー』を、是非大勢の皆様に、映画館で観ていただきたいです!
矢口監督の最新映画『ロボジー』は、1月14日より、全国東宝系でロードショー公開。青森県内では、TOHOシネマズおいらせ下田、ワーナーマイカルシネマズ弘前、青森コロナワールドの3館で上映されます。
「青森の魅力 meets 矢口監督」の本編は、これで終了です。
3回にわたりご覧いただき、ありがとうございました!
最後に、今回の取材を実現させてくださった関係者の皆様、そして矢口史靖監督に、この場を借りて、感謝の意を表します。
◎関連リンクのご紹介
映画『ロボジー』公式サイト
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