「でんけん地区」とは、正式には「伝統的建造物群保存地区」のこと。城下町や宿場町、農村や漁村の集落などの中に、日本の歴史的な町並みや環境がよく残されている地域を指します。
文化財保護法に基づいて定められているこの制度に、青森県内で該当している地域は現在、わずか二つ。ひとつは黒石市中町の、こみせ通り。そしてもうひとつが、弘前市仲町(なかちょう)です。
弘前城北門(亀甲門)の付近一帯に拡がるこの地域は、藩政時代には武家屋敷が集まっていました。その当時の面影をよく残しているということで、昭和五十三年(一九七八年)でんけん地区に指定されました。そして今もなお、往時の雰囲気を忍ばせているのです。
この地区には、無料で公開されている武家屋敷が三軒あります。それについてはまた後日、ご紹介させて頂くとして、今回は特に、その見事な町並みについて。
ご覧のように、黒い板塀や緑のサワラの生垣が道路に沿って整然と並んでいます。ちなみに、仲町のサワラ垣の長さは、全体で二七〇〇mほどに及ぶそうです。この生垣は、内側から外を透かして見ることができて、敵が攻めてきたときには生垣を通して槍で突くことができる……という説も、あるそうです。
ともあれ、弘前が城下町として整備された時の地割りが、今でも形をほとんど変えることなく、残っているという事実に驚きます。もちろん、こうした家々には今でも一般の方々がお住まいになられています。すなわち、この景観は、地元の住民の努力あってこそ残されている、たいへん貴重なものなのです。
実際、普通に辺りを歩いているだけで、こんな見事な松の木に出会えます。
日ごろからよく手入れされているのだろうということが、よく伝わってきます。
この日も、植木職人さんが庭の手入れをしている光景を、何度も目にしました。
そのうち、一人の植木職人さんと目があい、ちょっとだけ話を聞かせてもらいました。
なんでも、この辺りを通る観光客はよく、自分たちを見かけるとカメラを向けるのだとか。特に半分以上が外国人だそうで「英語でしゃべりかげられでもわがらねえはんでなあ」とのこと。
まあ、外国人にとってはこの風景や、植木職人さんたちの姿を見るだけで、エキゾチックなのでしょうね。
地域の住民や、職人さんたちの努力で守られている、この変わらない景観。しかし本当は、弘前市の住民全員が守っていかなければならない、大切な財産です。私もその一人として、自分にやれることをやっていきたいと思っています。
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