こちらは、おいらせ町にある樹齢約1,100年以上の大いちょうです。
下に約120cmのムスコがおりますが、比べていただくとその大きさのすごさがおわかりいただけると思います。
☆日本一の大いちょうプロフィール(平成4年調査資料から)
樹齢 約1,100年以上
樹高 31.6メートル
周囲 16メートル
(性別:オス)
平成元年の日本巨樹巨木調査(環境庁)で木の周囲1位になりましたが、平成7年に深浦の北金ケ沢のいちょうの木に1位の座を明け渡しました。
現在、おいらせ町のいちょうの木は長寿1位だそうです。(おいらせ町役場より)
このいちょうについて調べていたところ、「根岸の大いちょう」を昔話として語り継いでいる永井八郎さんから色々お話を伺うことができました。
画像左下にあるように、下に向かっている気根が垂れ下がっているのを乳房がたれていることに喩えて、「垂乳根」と呼ばれています。
母乳がよく出て子どもがすくすく育つように、と伝えられるいちょうの木が国内にたくさんあります。このいちょうの近くでは、十和田市の法量のいちょうがあります。
敷地内には、数本のいちょうの木がありますが、すべてこの木からのものではないでしょうか、と伺いました。この垂乳根が伸びていき、根をはって、新しい木となるそうです。
【 根岸の大いちょう伝説 】
昔、慈覚大使という坊さんが、人々に仏の道を教えながら諸国を行脚して、恐山へ向かうためこの地を通りかかりました。旅の疲れに、いつのまにか手にした、いちょうの杖によりかかったまま眠り込んでしまったところ、不思議な夢をみました。眼を覚ますと、いちょうの杖に根が生えて動かず、大師はそのいわれを書いた紙片と不動尊像を、杖の根本に残して立ち去りました。
それから数百年の年月が流れ、若い母親が生まれたばかりの赤ん坊を背負ってこのイチョウの木の下を通りかかりました。長引く飢饉のため、食べるものもなくお乳が出ません。泣く赤ん坊のために水を飲ませようと井戸を覗くと、いちょうの枝がお乳のような形で映っています。母親はいちょうの木に「私のお乳の代わりにこの子のお腹を満たしてください」と祈ると、いちょうの葉がばらばら落ち、赤ん坊は母親のお乳を美味しそうに吸っていたのです。
こうして、この大いちょうは、母乳不足の母親が乳がでるように祈れば、その願いが叶う霊樹として永く伝えられ、安産の守り神として大切にされてきました。
永井さんに伺った、伝説以外のいちょうのお話で興味深いことを2点紹介します。
1. いちょうの木は剪定をしないのだそうです。
いちょうは、自分の命を知っているため、耐えられないとわかると、自分から枝を折り、自分で自然に育つ樹木なんだそうです。このように通路に根が張り出して、どんなに踏まれても、強く生きています。
また敷地内には、このような大きな倒木があります。
↓こちらから折れたのではないかと思われます。
2.このいちょうの木の葉は、ある日突然どさっと一気に落ちるらしい。
普通、葉はぱらぱらと散りますが、このいちょうは一気に落ちることがあるそうです。そうした現象があった年は、豊作の年で、占いの木としても人々を支えてきたとのこと。ちなみに、ご友人がこの現象をみようと、落ちるであろう、といわれた日に張っていたそうですが、見れなかったそうです。残念。
昔は、願掛けのため硬貨が木の幹に差し込まれていたそうです。今は取り除かれその光景を見ることはできません。
このように、さまざまな伝説があるのも、1,100年もの年月、人々を支えてきた樹の偉大さを感じます。風が吹くたび、ぎぎぎぃー、パチパチ、など、木の揺れる音がとてもリアルで、まるで生きているかのよう。心を木に癒してもらえるような、そんなスピリチュアルな空間でした。
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