9月1日に鶴田町のスチューベン農家・奈良陽一さんの取材に行ってきたのでそれをレポートしたいと思います。奈良さんは46歳、今現在は奥さん・祖父母・長男さんでスチューベン畑・りんご畑を営んでいるそうです。家族構成としてはもう一方、ご次男が現在は就学中だそうです。
今年は、夏非常に暑い日が続いたので糖度が上がっているのですが、色上がりが進んでないので収穫時期は、標準の9月下旬から10月に伸びそうだという奈良さん。本当に立派な園地をお持ちでした。この園地だけで2500本のブドウの樹があるそうです。ウオークマン方式というヨーロッパでよく行われている垣根仕立てのぶどう畑で、園地の横幅は350メーター、奈良さんは笑顔で「世界で一番長いスチューベン畑」とお話してくださりました。
あまーいブドウ
スチューベンは収穫時期には「糖度20度程」になるそうです。「甘くてとろ~り」と美味しいから、ムクドリなどがつまみ食いに来ます。奈良さんが丹精込めて作ったスチューベンをつまむとは不届きな小鳥たちです。袋でガードしたり対策を講じてらっしゃいますが、これも自然との闘いですね。我慢強く収穫時期を待ちます。夏の日差しを受けて栄養を糖分に変えたスチューベン、朝夕の寒暖差が、美味しそうに漆黒の宝石へと色付けさせます。それがなかなか進まないのが、今現在の奈良さんの一番気になるところだそうです。果樹栽培特有の悩みですね。
スチューベン園地を始めたわけ
もともと三代続く農家の奈良さん、今ご紹介している園地も元はりんご畑だったそうです。津軽の農家誰もが経験し苦い思いをした、平成3年の台風19号によって元のりんご畑も大変な被害を受けたそうです。そのためもっと安定した収入に繋がるスチューベンに、園地を切り替えたのだそうです。この広さの園地を一気に他の作物に切り替えるには、かなりの勇気が必要だったと思われますが、家族のため・特に当時まだ幼い奈良さんのご次男に将来苦労はかけまいと決断なさったそうです。ブドウは植樹して2年で収穫し始めることができるのも、スチューベンを作付けしたご理由の一つでした。
鶴田町のスチューベン農家事情
スチューベンは、もともと米国で生まれた品種です。鶴田町近隣に根ざした訳は、ニューヨークと緯度が同じで、気候風土が似ているためだそうです。
奈良さんは収穫した、スチューベンを市場に卸す・固定客へ宅配するだけではなく、収穫体験も受け入れていらっしゃいます。子供たちや一般のお客様だけではなく、老人ホーム等の収穫体験イベントも積極的に受け入れているそうです。老人ホームのお客様には車いすをご使用のお方もいらっしゃいますので、ブドウの棚(成っている位置)を座った状態でも届く位置にしているそうです。ご自分たちの日々の作業は中腰でしづらくなるでしょうに、園地を訪れる人を一番に考えたお優しい心遣いを感じました。
また、鶴田町では近隣のブドウ農家が有志で結成した産地直送販売を受ける「農業法人津軽ぶどう村」という企業があり、奈良さんは市場に卸すだけではなく、こちらにも納品しているそうです。
奈良さんの喜び
第一にお客さまに「おいしい」・「奈良さんの所のスチューベンが欲しい」と言われること喜びとやりがいとのお話でした。実は園地を取材したとき、息子さん(ご長男)が農作業にいらっしゃたのですが、りんご農作業の最中ということでお話は次回ということになりました。園地にバイクで出勤する22歳の笑顔のまぶしい若者でした。奈良さんが「どこも後継者問題で頭悩ましているのに、我が家は息子が次ぐと言っている」と、笑顔を隠せない感じで話しておいでなので、家業を継いでくれる息子さんも喜びの一つかなと感じました。
「鶴田町道の駅あるじゃ」でも販売している白ワインも、原材料は奈良さんの所で作ったケルナーという品種を使っております。こちらは生食用よりも粒は小さいですが、一房に付いている身の量は多いですね。
取材日はちょうど、前日の大雨で園地にまだ水が溜まっておりましたのでこの後ポンプで排水する作業をなさるそうです。ブドウは、根が普通の果樹の樹より浅い所にあるので、園地が水浸しだと窒息してしまうそうです。樹木は「大事な財産」。来年も今年と同じく収穫できるように、日々気にかけてらっしゃる半ズボンに長靴姿のお若い奈良さんでした。
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